産業技術総合研究所情報処理研究部門では、ネットワーク上の複数のコンピュータや家電製品、携帯電話などを縦横に活用するアプリケーションプログラムを容易に開発することができる「ネットワークの空飛ぶ魔法のじゅうたん HORB」の研究を行なっています。
HORBは、世界で初めて異機種間での分散オブジェクト実行の実用化に成功した産総研の技術です。オープンソースソフトウェアとして世界中で利用されているほか、企業へのライセンス供与も進んでいます。
このたび株式会社東芝がロボット技術の展示会「ROBODEX2003」において「人と機械を仲介するロボット情報家電」という今までにない分野においてHORBを利用した技術を発表しました。
株式会社 東芝は、ホームロボットのコンセプトモデルとして、音声認識と音声合成技術により会話で人とコミュニケーションしたり、画像認識技術により予め登録した人を認識することができる「ApriAlpha(アプリアルファ)」を試作し「ROBODEX2003」に展示しました。「ApriAlpha」 には、機能の追加を簡単に実現できるよう、産総研の分散オブジェクト技術HORBを利用した新開発のオープンロボットコントローラを搭載しています。 同社は、今回、ホームネットワークに接続された機器と、使う側である人間の仲立ちとなり、誰でも違和感無く簡単にそれらの機器を操作できる「ヒューマンインタフェース」としての「ロボット情報家電」をコンセプトに、「ApriAlpha」を試作しました。
将来は、家事の支援や介護、軽作業を行なう機能を付加し、高齢者や家族が安心して暮らせるパートナーとして発展する見込みです。
人間と機械を仲介するロボット情報家電 ApriAlpha
東芝は 「ApriAlpha」 に様々な機能を搭載して簡単に機能拡張ができるように、分散オブジェクト技術HORBを利用した 「オープン・ロボット・コントローラ・アーキテクチャー(ORCA)」 を構築し、このアーキテクチャーに基づくコントローラを新たに開発しました。
このコントローラは、CPUやOSに依存することなく、運動制御や、通信、画像処理、音声処理、各種センサーといったロボットに必要な各要素技術を容易に取り込むことが可能です。今回のコンセプトモデルの試作にあたっても、同社が今までに蓄積した産業用ロボット、原子力施設保守用ロボット、宇宙用ロボットの運動制御技術や、カーナビ向け音声認識や音声合成技術、セキュリティ用画像認識技術などを再利用して取り込むことで、新たなソフトウェアの開発を最低限に抑えています。このコントローラアーキテクチャーの普及を目指して、ロボットの開発を行なう各メーカーや、大学、研究所、これから参入を考えている企業などに対して採用を呼びかけていくとのことです。
ロボット情報家電は人と機械を仲介する新しい商品分野で、HORBを中核とする「オープンロボット・コントローラ・アーキテクチャ ORCA」により、新しい機器の接続が容易であるという特徴を有します。
ApriAlpha
(写真提供:株式会社東芝)