発表・掲載日:2003/03/03

教室を一つに 日韓合同授業

-国境を越えたクラスメイトづくりを-


 人間福祉医工学研究部門認知的インタフェースグループの森川治主任研究員が中心となって開発している「ハイパーミラーシステム」が2月13日、大阪府藤井寺市立道明寺南小学校(日本)と韓国金海市の翰林(カンリム)初等学校の間での日韓合同授業で使用されました。

 この授業の特徴は、一人の教師が両校の生徒に、同時に同じ教材で行う遠隔授業でした。これまでも合同授業が試みられましたが、双方の学校に個別に教師がいて、いわばお客様としてテレビ電話に写った交流校の先生や生徒がいたわけですが、今回は、日韓両国の生徒が同じように、画面上にいる一人の教師からの指導を同時に受けることになりました。このため、この授業ではハイパーミラー画面と机の間を巡視(机間巡視)するカメラとの切り替えを駆使することで、生徒一人一人に目が届く合同授業環境を実現するシステム構成でした。

 授業は、全員(日本側85名、韓国側57名、いずれも6年生)が画面上で順番に握手することで始まりました。

 はじめは、画面上に写る先生と、実際の教室にいる先生を交互に見る生徒が多かったが、そのうち画面だけを見るようになりました。

 授業科目は道徳で、「自分の家族の紹介と家族に対する思い」を日韓それぞれ3名の生徒がハイパーミラーのステージに上がり、報告しました(写真1)。画面上では日韓両校の生徒6人が先生を中心に立っている様子になっています(写真2)。

 授業中、教師がカメラを切り替えて机間巡視をし、姿勢の悪い生徒に「そこの前から2番目の君、姿勢悪いぞ」と注意。注意された子は実は韓国にいた生徒だったが、この一言で、日本韓国の距離を一挙に縮めて生徒全員が一つの教室に居るという雰囲気になったことが印象的でした。

写真1
写真1
 
写真2
写真2
 

写真は道明寺南小学校より掲載許可を得ております。



合同授業とは
  • 同時同一の画像、音声(文字)での学習活動
  • 教材は一つ(共通教材)
  • 指導者は一つ
  • 指導者は一人
合同授業に期待すること
  • 学習に対する興味、関心の高まりを
  • 学習理解度の向上を
  • 国境を越えたクラスメイト作りを
  • 教員間交流の深化を
  • 学習活動のニーズにあったIT機器を
  • 情報機器の操作力及び活用力の向上を

 最後に、卒業までに「家族に送る感謝のメッセージ」が宿題として出されて授業は終了しました。

 通信回線の不調で、声が途絶えたり聞こえ難かったり、画面が乱れたりといったアクシデントに見舞われましたが、教師や大阪大、先進的教育情報環境整備協議会などからの技術的なサポート部隊の方々により、適切に処理され、最小限の障害の元で授業が行われました。実験に協力してくださった多くの方々に厚く感謝する次第です。

 この試みは、藤井寺市教育委員会、金海市教育庁、大阪大学大学院人間科学研究科(前迫研究室)、独立行政法人産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門、先進的教育情報環境整備推進協議会(e-kikoro)、株式会社東芝の協力・支援で行われました。



問い合わせ

人間福祉医工学研究部門
認知的インタフェースグループ
主任研究員 森川 治 morikawa.osamu@aist.go.jp


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