産総研:単一分子電荷輸送での量子干渉のゲート制御と反共鳴の直接観測

材料・化学領域
単一分子電荷輸送での量子干渉のゲート制御と
反共鳴の直接観測
  • 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センターMarius Buerkle
  • 浅井 美博

単分子電荷輸送における反共鳴と新しいゲーティング機構

電気化学ゲートSTM法を用いた電気伝導度の精密計測により、単一分子の電荷輸送に関する理論予測を、広いエネルギー範囲にわたり定量的に検証することに成功した。特に量子干渉の結果である反共鳴を直接観測した。

 

量子干渉の電荷輸送への影響を観察・制御

究極の微細サイズを持つ1分子チャネル材料の利用や設計のためには、ミクロスケール特有の現象を理解することが重要である。単一分子の電荷輸送に強い影響を与える量子干渉を高精度で制御できれば、スイッチング材料などへの展開が期待できる。

 

単一分子電荷輸送における量子干渉と反共鳴のゲート制御

ジフェニルベンゼン単一分子について、広いエネルギー範囲にわたって電気化学ゲートSTM法を用いて電気伝導度を測定した結果、測定値は独自開発の第1原理シミュレーション値とよく一致した。最高被占分子軌道(HOMO)と最低非占分子軌道(LUMO)の間の量子干渉を調整することで、破壊的干渉の特徴である反共鳴を直接観測できた。分子の共鳴状態を調節することで2桁以上にわたり電気伝導度を連続的に調整することにも成功した。これにより、電界効果トランジスタによるゲート機構とは異なる機構である、量子干渉によるゲーティング原理を実証することができた。

 

ナノエレクトロニクスデバイスの設計も可能に

1分子チャネル材料の利用・設計の基礎として次世代ナノエレクトロニクスの開発への貢献を目指す。また、独自開発の第1原理電気伝導シミュレーション手法は、本研究によって性能の高さが実証された。今後のデータ駆動型材料設計へ活用していく。

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機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター 量子化学・分子シミュレーションチーム

上級主任研究員 Marius Buerkle

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