真核生物誕生に有力な新説を提案
本研究では、独自のバイオリアクターを用いた培養と最新の遺伝子解析技術を組み合わせることにより、12年にわたる研究の末、海底の泥から私たちの祖先に近縁なアーキアの捕獲に世界で初めて成功した。MK-D1株と名付けたこのアーキアは直径550 nm(1mmの約 2000分の1)の極小細胞で、複雑な内部構造を持たず、外へ特殊な触手を伸ばし、酸素を嫌い、他の微生物に依存し生きる、我々と似ても似つかない生命体であった。一方で、ゆっくり増殖し、細胞の加工・維持に焦点を置くなど、通常の原核生物とはかけ離れ我々に似た性質も持っていた。27億年前の地球上の酸素発生をキッカケに、異質で酸素嫌いなアーキアと酸素依存のバクテリアが一体化しそれぞれが細胞の「操縦士」と「動力」となった一見相容れない2者の融合、敵対、そして和解を描いた真核生物進化の道筋についての新しい進化説”Entangle-Engulf-Endogenize (E3) model”を提案した。