取材日:2017年3月16日
従来技術の応用から新分野へ
当事業を知ったきっかけと応募理由をお聞かせください。
北芝電機株式会社:
平成26年から27年までFREAの委託研究として「水素利用蓄エネルギー有効活用のための先進的熱交換器の開発」のテーマで、熱交換器の開発と製造をさせて頂きました。
弊社が製作した熱交換器が設計どおりの性能がでるかどうか、FREAの方で検証試験して頂くということで、平成28年度のシーズ支援事業に応募しました。
設計したものが当初の目的の能力を発揮できるか、設計どおりできているのか検証して頂いて、設計とものづくりが間違っていないことを検証できればありがたいです。
当所研究者に技術的支援(具体的な取り組み)を受けた感想・効果をお聞かせください。
北芝電機株式会社:
FREAの試験設備や検証設備は、弊社に比べ最新鋭で、規模も大きいということもあります。また検証試験の実施方法や、技術的アドバイスなどをFREAから十分頂けることができたと思っております。
特に昨年度は、月一回FREAにお邪魔して、担当の方とお話しさせていただき、進捗の状態によって適切なタイミングでアドバイスを受けられたというところが大きかったです。
産総研と一緒にやることで御社内の研究活動や体制、技術者の意識などに何か変化などありましたか?
北芝電機株式会社:
分からないところがあるとお聞きし、自ら深堀したいということで文献についてご相談させていただいたりして、もっと知識を深めようという意識が芽生えました。そういった意味でも、技術者の向上しようという意識が芽生えたのは大きいと思っております。
文献調査では、まずはインターネットを使って調査をしています。研究者と対等にお話しできるのがまずは大事だと思っています。やはり、分からない言葉で話すには無理がありますので、ある程度知識を持っていないといけないと思います。お聞きすると教えてくださるのですが、自分で分かってないと今後の発展が無いため、自ら調べるきっかけになりました。
これまでに培った技術だけで仕事をするところが多いため、全く新しい分野に進んでいくきっかけがありませんでした。今回は高温領域という新しい分野であり、大変勉強になっております。
またこれに限らず、FREAはグローバル視野で、どういったところに技術があるかという情報も教えて頂けます。技術習得にもなり、次のヒントにもなり、非常に助かっています。
顕熱・潜熱両方を交換できる熱交換器の優位性と現状の課題について(可能な範囲で)教えてください。
北芝電機株式会社:
これまでの弊社の熱交換器は100℃以下までなので、顕熱しか利用できなかったのですが、潜熱を勉強していくと、潜熱の方が大きなエネルギーを持っていることが分かりました。大きなエネルギーを有効に利用したいというところで、どうすれば潜熱を有効に熱交換できるか、という技術を高めていきたいと考えております。
また液体から気体に状態変化するプロセスの過程、簡単に言いますと水が蒸気になって膨張しますので、そういった部分の安全性などを含めて、今後開発を進めていきたいと考えています。
世の中には液体と気体の通常の熱交換器がありますが、気体から液体に、液体から気体にという二相流体の混合の熱交換器というのはこれまで世界的にないというところで、技術的に確立できれば事業的にも優位性が出てくるのではないか、というお話を頂いております。まずは、FREAの水素エンジンのトルエンとMCHの熱交換器というところで、今後使用できる範囲を極めていきたいと思っております。
開発した熱交換器はどのような所で使用されますか。
北芝電機株式会社:
弊社の水素関係の熱交換技術を確立することができれば、福島県が今考えている「福島県新エネ社会構想」で、2020年を目標に福島県が水素の供給基地になるということが示されています。福島県で水素を作りどのように運ぶのかということになると、実際には液体化したり、高圧ボンベの中に入れたり、MCHとトルエンの混合にしたりの3種類ぐらいしかないと思われます。
一番安全で確実なところでいきますと、FREAと一緒に実施している、MCHとトルエンの熱交換技術があれば、弊社としては、水力発電や受変電設備にプラスして、水素を作って運ぶという水素関係で、福島県の復興をお手伝いでできるのではないかと思っています。
事業化に向けて残っている課題に対して期待する支援を教えてください。
北芝電機株式会社:
現段階では、まだ模擬流体による試験段階ですが、最終的にはMCHとトルエンによる実流体による試験を経て熱交換技術の開発が目標です。試験するにしても、取り扱いの難しい液体ですので、FREAに協力して頂いて実現していきたいと思っております。
二相流体ということで、液体が気体になったとき膨張する等ありますが、そのあたりの安全性の考え方が併せて課題になっていくものと考えています。
現在の模擬流体は水を使っていますが、トルエンやMCHは膨張率が200~250倍なのに対し、水の場合はもっと大きく1800倍~2000倍になりますので、模擬流体よりも実流体の方が圧力が低いということで、安全だろうという見解を頂いています。ですが、最終的には実流体での検証は必要と考えています。
当事業についての意見や改善点または魅力など教えてください。
北芝電機株式会社:
今回作った製品は高温領域の熱交換器なので、弊社で設計製造したとしても検証試験が弊社には設備もないためできません。今回FREAで検証試験を実施して頂けているため、設計の検証ができるのが一番の魅力と思っています。また、自分たちで検証したというよりもFREAの検証したお墨付きがあると、アピールの度合いが違いそのブランドイメージもあると期待しています。
平成28年初めてシーズ支援事業に応募させて頂きましたが、公募から申請締め切りまでの時間がちょっと短かったかな、というイメージがあります。
御社での公的支援制度の活用実績を教えてください
北芝電機株式会社:
NEDOの研究助成事業で、次世代TVR(サイリスタ式自動電圧調整器)の開発を実施しております。これは、配電系統の電圧を調整するために並列変圧器と直列変圧器間をインバータとコンバータで結合し、連続かつ高速で電圧を調整できる電圧調整器です。これはFREAのスマートシステム研究棟に運び、EMC試験や負荷電流試験等を実施して頂きました。本NEDOの研究助成事業は、(株)東芝、富士電機(株)及び弊社との3社と合同研究開発という形で実施しています。
もう一つは、NEDOの「水素社会構築技術開発事業」という事業があり、東北大学から委託研究という形で実際に全体のシステム制御と計測インタフェースを作っています。概要は、再エネによって水素を作り、それをもってBCP(事業継続計画)がうまく機能するかどうかの実証試験になります。これは弊社が作ったシステム制御を現地に納め、東北大学の方が検証されることになります。
平成27年には、福島県の補助金で土湯の道の駅に5kWの風力発電システムを設置しました。これは福島大学と共同研究を継続し、データ取得等を実施しております。また、福島大学との共同研究で、1kWの風車向け発電機を弊社で作り、福島大学に納めました。福島大学の風車技術を用い、弊社が発電機を製造したイメージとなります。
東日本大震災の後、御社で新たに取組んでいることはありますか?
北芝電機株式会社:
弊社としては、再エネ関係の太陽光や風力向けに受変電設備を数多く納めさせていただいております。福島県には再エネ関係で、太陽光や風力などの発電所がまだまだ設置されると考えています。弊社としては、そういう発電所に製品を納めたり、サービスを提供したりということで、復興に繋げていきたいと考えております。
産総研又はFREAに望むこと、期待することはありますか?
北芝電機株式会社:
技術支援や助言には大変助かっておりますので、引き続きよろしくお願い致します。 他には、一企業の中ではできない、色々な検証試験を一緒に実施していけたらと思っております。一企業では持てない試験設備を、FREAは相当持っていらっしゃいますので。
弊社としては、トルエンとMCHの実流体での熱交換試験ができる設備があると助かります。取り扱いが難しいので、一企業で持つのは中々難しいところがあります。
今後、再エネの技術を活用したいと考えている(が、まだ踏み出せていない)企業の方へのメッセージをお願いします。
北芝電機株式会社:
福島県内の企業は、どの企業も潜在的な技術は持っていると思います。その潜在的な技術をFREAにお持ちした際、どんな役に立つのか等を相談することができれば、その技術が、自分たちが思っていた別なところで使えたり、別なものになっていったりと、事業や世界が広がっていくのではないかと思います。
弊社が、高温領域の熱交換器のお話をFREAの方から頂いて、設計製造までできたということもあります。
これまでの支援状況
蓄エネルギー分野
- 水素利用蓄エネルギー有効活用のための先進的熱交換技術の開発(平成28年度)