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ニュース

2018/12/25

「第12回アジア地熱シンポジウム(AGS12)」11月10日(土)~12日(月) 開催のご報告

   2018年11月10日(土)~12日(月)、韓国大田市の韓国地質資源研究院(KIGAM)において、第12回アジア地熱シンポジウム (AGS12) をKIGAMとの共同主催、協力は、国際地熱協会のアジア-西太平洋地域支部で開催しました。本シンポジウムに先立ち、11月9日には国際エネルギー機関(IEA)の地熱実施協定による地熱直接利用のワークショップが同KIGAM構内で開催されました。10日はフィールド・トリップで、隣接する世宗市の市庁舎等の巨大な地中熱ヒートポンプ施設等を見学しました。続く11~12日に、AGS12のセッションが行われました。

KIGAMのAGS12会場にて (2018年11月12日)

   AGS12のテーマは、「地熱エネルギー利用技術―社会との共生めざして “Technology for geothermal energy use in harmony with society”」で、85名の参加がありました。AGS12セッション初日 (11月11日)のオープニングでは、KIGAMのYoonho Song博士が、 KIGAM所長であるBok Chul Kim博士の代理で歓迎の挨拶を行い、2018年はKIGAMの発足から100年、現在の形での設立から70年の記念の年であり、その機会にAGS12を開催できることは光栄であると語りました。続いて、再生可能エネルギー研究センターの安川香澄副研究センター長が、オープニングの挨拶として、KIGAMでのAGS開催は2004年のAGS6に続き2回目であることと、AGS6以降は毎回、産総研とKIGAMとでAGSを共催してきた協力関係に対する謝意を述べました。

KIGAMのYoonho Song博士による歓迎の挨拶 (11月11日)

   AGS12で特筆すべき技術的内容は、初日午後の「資源探査」と二日目の「社会的側面」のセッションです。前者では、8か国からの8名による講演の後、ドイツの Inga Moeck博士の司会により、「地熱プレイタイプ」に関する議論が行われました。プレイタイプは石油業界で広まった概念であり、地熱貯留層の成因や構造(地質・熱構造等)に基づいた分類により、タイプ毎に資源量評価や開発指針を効果的に行うことを目指しています。高エンタルピーの地熱資源は特に分類が難しく、タイプ分けに懐疑的な考えもありますが、いずれにしても、国際的な議論が始まったばかりですので、アジアにおいて議論する良い機会となりました。AGSで議論の場が設けられたのは初めてのことです。後者の「社会的側面」も、AGSのセッションとして取り上げられたのは初めてのことで、KIGAMが招聘したイタリアのAdele Manzella博士による「イタリアでの地熱市場に関する普及活動と社会的側面」という講演を始め、ユニークな発表が続きました。
   なおAGS12のプログラムは、以下をご参照ください。


またAGS12で発表されたすべての論文は、国際地熱協会の地熱データベースに掲載される予定で、以下から検索することができます。


今回は、IEA地熱実施協定によるワークショップと併催としたことで、アジアを始め、オセアニアやヨーロッパからの参加者を広く集めることができ、IEA地熱実施協定との協力関係に感謝しております。

   11月10日のフィールド・トリップでは、世宗市の市庁舎および研究施設に設置された巨大な地中熱ヒートポンプ設備を見学しました。世宗市には近年、韓国のほとんどの政府機関がソウルから移転しており、政府施設はゾーン1~3の3地域に分けられています。これら政府施設の建物総面積は607,555 m2.に及び、その冷暖房の38%は総容量20 MWt 超の地中熱ヒートポンプによって熱供給されています。そのうち70%は、200m長の坑内熱交換器1,190本、総長 238 kmから採取され、30%は約400m深にある地下水との熱交換によって供給されています。ゾーン1は2012年、ゾーン2は2013年、 ゾーン3は2014年に完成し、その後、市庁舎など市の施設にも地中熱ヒートポンプが導入され、市の施設の見学を行いました。

地中熱によって冷暖房が行われている世宗市庁舎 (11月10日)
世宗市庁舎の地下にある巨大な地中熱ヒートポンプ設備 (11月10日)
世宗市を訪問した後、AGS12参加者たちはガプサ寺を訪れ、美しい紅葉に囲まれた韓国の伝統的建築物を見学しました。

ガプサ寺の紅葉 (11月10日)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所